…6。
シャワーを浴び終えると長袖のYシャツを出して着込んだ。
窓から見える空は、五月晴れで長袖じゃ少し暑いくらいだけど、手錠の所為で付いた手首の傷を隠すには少しピチッとしたものじゃないと見えてしまうだろう。
本当なら包帯もしなきゃだけど、どうも自分では上手く巻けなかった。
自分の不器用さに泣けてくる。
「…見えない、よな…?」
Yシャツのボタンをかけながら首元を念入りに確認した。
一応、首にはなかったと思うけど、もしキスマークが見られたら悶死どころの騒ぎじゃない。
念には念をと一番上までキッチリとボタンをすると、不自然じゃないようにネクタイもした。
本当はラフな私服でいいと言われていたのに、なんとも真面目に見える。
「…よし!」
気合いを入れて、携帯や財布など最低限の貴重品を持つと、一度深呼吸をしてから部屋を出ることにした。
頭の中は、どんな顔をして朝比奈に会えばいいのかでいっぱいだったけど…。
―ガチャ、キー…
「……」
「………」
バタン!ガチャ…―
人間、心の準備って必要だよね。
開けたドアのすぐに前に立つ人物を認識した瞬間、光の速さでドアを閉めた。うっかり鍵まで掛けたのはあれだ。ご愛嬌って事で。
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