…3。
…本当、信じられねえ。
いくら何でも、牽制したその日に他の男を連れ込むか?
何が「そういう事」だよ!
「そういう事」なら「そういう」態度を取れって言うんだ!
苛つきながらドカドカと石畳を踏み鳴らして歩き、なんでこんなに腹が立つのか疑問に思ったが、理由云々とか関係ない。
無限の所為で寝不足な事がムカつくんだとそう思った。
だって、それ以外にムカつく理由なんてないんだから。
鼻息を荒げたまま、暫く裏山の林を歩いていると、いきなり視界が開け息を飲んだ。
「っ、わぁ…すご、」
目の前に広がるのは、濃いピンクと白が見頃な芝桜の絨毯。
その先には樹齢が百年はあるんじゃないかと思われる、立派な桜の大樹が立っていた。
「おおー!」
胸のもやもやが一気に晴れる位の感動に声を上げて、思わず走り出した自分は子供みたいだ。
一気に幹まで走り寄り、その幹に手を当ててみた。
ひんやりとして重みのある木肌に土とピンクの花の香り。
休日だというのに誰もいないここは、さながら俺だけ秘密基地。
独り占めしたような優越感に顔を綻ばせると、大きな幹に寄りかかって腰を下ろした。
ふわふわと花の香りがする。
桜に芝桜。遠くの方には黄色の菜の花。
…なんか持ってくればよかったな。
こんな所で飯とか食べたら最高かも。
流石に昼間から花見酒とは言えないが。
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