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…1。





「ふぁ〜あ、」


大きな欠伸を一つ吐くと、眩しい位の青空を見上げた。



作業用のツナギにタオル。
それに諸々の荷物を詰め込んだサイドポーチを着けた俺は、今学園内にある裏山を歩いている。


綺麗に手入れされた裏山は、山というより庭のようだ。


山というから、もっと険しいものを想像していたが、どうやら杞憂だったらしい。

ツナギなんて着なくても、普通にジーンズとかでも大丈夫だったな、なんて今更ながら苦笑いした。


石畳の狭く緩やかな坂に、きちんと枝切りされた木々。
綺麗な小川まであって、そこには景観を損なわない程度の小さな橋もかけてある。
マイナスイオンでも出ていそうな空気を吸い込みながら、小川にかけられたら橋の上で立ち止まると、サイドポーチから出した地図を広げた。




「…ここがこれだから、この先を右か…」


ブツブツと独り言を呟く俺は、端から見ればちょっとおかしいだろう。
でも、俺の心が躍っているんだから仕方ない。



先程までいた中庭で、学園庭師という人に会ったのは嬉しい出会いだった。



中庭は、校舎に面して桜とイチョウが並んでて、その真ん中は綺麗な生け垣に囲まれた噴水がある。

四方に設けられたら陶器の水瓶に睡蓮の葉が浮んでいた。



「おはようございます」なんて、一生懸命、噴水の藻をとっている庭師に挨拶しながら綺麗に手入れされた庭を褒めると、気を良くした中年庭師が、裏山の桜が見頃だと教えてくれたのだ。


丁寧に地図までくれて詳しい道順まで教えてくれるんだから、優しいったらありゃしない。






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あきゅろす。
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