…12。
「え?何?なんて書いてあったの!?」
「えっ!?あの…その…」
「ほら、さっさとゴールするぞ。」
スタッフが持つ紙を奪おうと手を伸ばしたけど、朝比奈に引っ張られた所為で端っこしか掴むことが出来なかった。
ビリッと派手な音を立てて破けた紙の切れ端を持ったまま、朝比奈に引きずられながらゴールに向かう俺は、とりあえず紙を見ようと視線を落とした。
「…んなの、ゴールしてから見ろよ。追い付かれるだろ?」
朝比奈に言われて始めて気付いたけど、なんだかんだしている間に後続の選手が差を詰めていたみたいだ。
10m程離れた場所を桃チームの選手が、なにやら黒っぽい物体を掴んで走ってくる。
…一体、何を借りてきたんだ?
いつの間に?よりも、つい何を持っているのか気になってしまったが、とりあえず、教師の所為で一位を逃した…なんて事になったら大変だ。
「ごめん、急ごう。」
「…やっとやる気になったのかよ。」
呆れ顔の朝比奈に言われて眉を下げたけど、
…ごめんね、朝比奈。
やる気出しても多分速度は変わらない!
そして、今までも正直本気で走ってました!!
やっぱりいくら頑張っても、これっぽっちも速度は変わらなくて。
チラッとこっちを見た朝比奈が「マジで?」って顔をした気がして申し訳なさでいっぱいになった。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!