…12。 「………………おいっ!」 すっかり外に意識を飛ばして、明日の事を考えていた俺は、無限の声に我に返った。 「何はぐれてんだよ!焦っただろ!」 早足で近付いてきた無限は俺の手を勢いよく引っ張ると、 「後ろ見たらお前居ないし、初っ端から連れ込まれたかと思ったろ…」 はぁ。と深い溜め息を吐いて、うっすらと汗の滲む額を俺の肩に乗せた。 「…っ、」 すぐそばで触れる無限の髪が、嫌みのない整髪料の香りを漂わせ、 ――とくん。 …? なんだ? 胸が一瞬ざわめいた気がした。 本当に、一瞬だったけど。 「……離れんなよ。心配だから。」 俺の手を引っ張りながら、少し早足で歩き出した無限に連れられて廊下を急ぐ俺は、気のせいか頬が熱い気がした。 …多分、早足になってるからだ。きっと。 無限が俺の手を離したのは、2年D組の教室前だった。 もう他のクラスはHRを始めていて、勿論浮き足立った騒がしさはあるがD組ほどじゃない。 まあ、生徒だけで大人しく待っていろ、なんて無理な話だけど。 「………ったく、あとで文句言われたらお仕置きだからな、覚悟しろよ。」 …お仕置き!? どうしてもBL的見解が頭をよぎって息を飲むと、 「……何?期待してんの?」 「し、してません!何も!全然!」 俺の小さな変化に気付いて、にやつきながら突然フェロモンを放ち出した無限から距離を取る。 …なんだか、心臓に悪い。 なんでだかはわからないけど。 「……まあ、とりあえず教室入るか。お前は後ろから入って、しっかり見学しとけよ。」 差し出されたファイルを受け取りながら無限の言葉に頷くと、そろそろ扉を開けた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |