…5。
早々に紙を拾った朝比奈は、その場で開くとすぐに緑チームのベンチに向かって走ってきた。
『―…チームベンチへ戻ります!一体何を引いたのでしょうかっ!』
興奮気味な放送が聞こえてきたけど、俺には走ってくる朝比奈よりも、その後ろで無限が拾った紙をジッと見たまま固まっている事の方が気になって仕方ない。
…何の紙を拾ったんだろう。
無限なら、どんなお題でも簡単にこなせそうなのに。
後続の走者が追いついてきても動こうとしない無限を、落ち着かない気持ちで見つめ続けていると、
「―…い。…おいっ!聞いてんのか!」
「!?」
いつの間に来たのか、朝比奈が俺の目の前で苛立った声を上げていた。
「あ…さ、ひな…?」
「チッ、…早く来い。」
「…えっ?」
多分俺の視線の先に気付いてる朝比奈は、舌打ちをした後に俺の手を掴んだ。
…なんか、さっきもこんなシチュエーションだった気が。
ただ今回は腕じゃなくて、借り物が人間だった場合は手を繋いでゴールっていうルールから、手をしっかりと握られてるんだけど。
「…えっと…っ、朝、比奈…?」
「……。」
手を引っ張られて背中しか見えない朝比奈は、俺にしてみれば凄く足が早くて追いつけそうにない。
引きずられるように前に進む俺の問いに、一向に反応を示さない朝比奈は、一体何の紙を引いたのか。
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