…15。
「……ごめんね…?怪我はないかな…。」
一生懸命笑顔を作ったつもりだけど、ちゃんと笑えていただろうか。
「……チッ、」
そんな俺に舌打ちをした後、不良選手は顔を逸らして小さく呟いた。
「…絶対越すって言ったのに…」
…え?
どうやら一位をとると誰かに約束していたみたいだ。
悪い事をしたな…って思ったけど、だからといって勝ちを譲るわけにもいかないだろう。
…ごめんね。
もう一度、心の中で謝ると、すぐに順位報告のスタッフがやってきた。
「…それじゃあ、借り物の確認をもう一度します。」
「俺は、浜田のカツラだ。」
…!?
すかさず、そう言って握っていた黒の物体をスタッフに渡したのは不良選手だ。
…てか、その物体って浜田先生のカツラだったの!?
浜田先生とは三年F組の担任教師で、横山先生と並んでメチャクチャ怖いと有名な先生だ。
誰もがどこから見てもカツラとわかってはいるのに、誰もそれに触れる事はないと暗黙の了解になっていたのは、新任の俺でも知っている。
…勇者!
これを勇者と呼ばずになんと呼ぼう。
まさかあの浜田先生からカツラを奪い取ってくるとは!
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