…20。
「お疲れ様でした。お題の確認をしてよろしいですか?」
「…ああ、お題ね。」
軽く汗を拭う姿にうっかり見とれそうになったけど、やっぱりそれよりも、無限がどんなお題で夏兄を連れてきたのが気になってしまう。
別にそんな必要もないのに、反射的に息を止めた俺は、バクバクと激しく響く鼓動で聞き逃さないように耳をすませた。
「…『怖い人』だ。」
…………………は?
無限の言葉が理解出来ずに、頭の上に?マークをたくさん付けた俺は、二人の方に視線を向けた。
…怖い?
誰が?…夏兄が?
だって俺の知ってる夏兄は、いつも笑顔で優しくて、落ち着いた大人って感じの物腰で、怒った顔なんて想像出来ない人物なんだ。
どう間違っても『怖い人』に当てはまるとは思えない。
「…確かにお題の方は合ってますけど…」
あらかじめ、何組目にどんなお題が出されるのか決まっていたのだろう。
手に持っていたファイルらしきものを見るスタッフは、お題内容を確認しながら困った顔をした。
どうやら俺の聞き間違いではないらしい。
…多分、俺と同じ意見なんだろうな。
スタッフも、元々穏和な性格の夏兄が『怖い人』のお題に合っているとは到底思えないんだと思う。
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