…11。
「………おい」
「はィイ!」
始業式が終わり、教室に戻っていく生徒を見送りながら、
背後からの無限の声にビクついて肩を揺らした。
「…お前バカだろ?」
まだ不機嫌ではあるが、いくらか和らいだオーラに少し息を吐き、バカ発言に首を傾げる。
「あれだけ気をつけろって言ったよな?あれじゃ、イジメてって言ってるのも同じだぜ?」
「?」
もう一度首を傾げてみると、酷く苛ついた声が返ってきた。
「挨拶だよ!」
「う、わ、ごめんなさい!」
…怖いよ。
絶対目をつけられた。とか、せっかく俺が予行練習までしてやったのに。とか。
ブツブツと文句を付けながら進む無限の後ろを歩きながら、
「…元はといえば、無限先生の所為じゃん…」
「あぁ!?」
「何でもございません!」
本当に小声だったのにしっかり聞いていた無限に首をすくめると、まだ着慣れないスーツのネクタイを少し緩めた。
「ふう…」
…激しく疲労した。
本当疲れた。もう帰りたい。
歩き出した廊下は、風通しの為に窓が開け放たれていた。
そこから入り込む柔らかな風に立ち止まるとぼんやりと外を見た。
外は、青の薄い綺麗な空が広がり、すぐ近くで春を主張する桜はまだ蕾が多く、あと三、四日もすれば見頃になるだろう。
…そういえば、こっちに来てから忙しくて、ゆっくり景色を楽しむ暇もなかったな。
花や木々は好きだ。
勿論、人間も含め動物も昆虫も。
春は生命の息吹を感じる一番好きな季節で、春の中でも冬との境、早春が一番好きだったりする。
…明日は休みだし、少しこの辺を探索でもしてみようか。
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