[携帯モード] [URL送信]
…17。





段ボールを持つ朝比奈の左手を見つめると、自分の右手を軽く握ってみた。



…なんか、変な感じ。



本当ならもっと警戒して、出来るなら近付かない方がいいような、ぶっちゃけトラウマばかりを与えられている気がする。

なのに、気が付けば心の内側に入り込んでて、いつの間にか気を許してしまっている自分に驚きだ。





「…おい。」



無意識に右手を見つめていた俺は、朝比奈の声に顔を上げた。



「え?」
「着いたんだけど。」



やっぱり若さの違いなのか、自分ならもっと掛かっていたであろう距離をあっという間に終わらせた朝比奈が、資料室の前で俺を待っている。



「あ、ごめん。今開けるから。」



資料室は原則として生徒の立ち入りが禁止になっていて、準備室など生徒が立ち入れる場所とは違って入室には教師の持つIDカードが必要だ。
入室の記録が残される仕組みらしい。

慌てて自分のIDカードを取り出しセンサーにかざすと、ロックが外れる音がした。






「ありがとう。あとは自分で出来るから。」


朝比奈から段ボール箱を受け取ると、



「翔汰。」



中に入ろうとして呼び止められて、小さく溜め息を吐きながら振り返った。



「…だから、先生だってば。」

「あんた飯は?」



せっかく訂正したのにこれだけ綺麗にスルーするのってどうかと思う。







[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!