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…15。





まだ半分は残っている距離にもう一度大きな息を吐くと、



「よっ…と!」


うっかり漏れた掛け声が虚しく校舎に響いた。




「…何してんの?」
「うわぁっ!」



突然背後から掛けられた声に驚くと、うっかり離しそうになった段ボールを後ろから伸びてきた手が支えてくれた。



…あ、危なかった…。


一瞬、足に落下してのた打ちまわる自分を想像して背筋がヒヤッとした。

だって絶対痛い。
マジで落ちなくて良かった!




「ありがとう。…って、朝比奈?」



ヒョイと手から段ボールを奪って「重っ」なんて呟くのは、相変わらず夕日色の髪に金のコンタクトをした朝比奈で。




「翔汰には無理だろ。運んでやるよ。」



いつの間に現れたのか、ごく自然に手伝おうとしてくれる朝比奈は、重いと言ったわりに軽々と段ボールを持ち上げている。

…ちょっぴり悔しいとか絶対に言ってやるもんか。




「いいよ、自分で運べます!
てか“先生”を付けてよ。翔汰先生、または原田先生だろ?」



初日の罰掃除以来、俺を「翔汰」と呼び捨てにする朝比奈に抗議すると、「はいはい」なんてこれっぽっちも気にしていない朝比奈は、そのまま階段を上っていった。

おいて行かれた俺は小走りで追い掛けたが、ぷるぷると悲鳴を上げる足にはちょっと酷すぎる。



「だから、大丈夫だって。」


…本当はかなりヤバかったけど。



「無理。フラフラしてて危なっかしいだろ。
こっから落ちたらシャレになんねぇ。」



呆れたように言い放つ朝比奈は、あっという間に階段を登り切り廊下の真ん中辺りで「どこに持ってくんだ?」と訊いてきた。







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あきゅろす。
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