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…7。





パチリと目が覚めた。



…なんだったんだ?今の…



どこまでが夢で、どこまでが現実だったのか境が曖昧でわからない不思議な夢に眉を顰めると、濡れた頬にいつの間にか泣いていた事に気が付いた。



「…恥ずかし…」



寝ながら泣くとか本当、恥ずかしすぎる。
それでも、懐かしい記憶に自然と口元が緩んだ。



…最後の方、懐かしかったな。



あれは小学四年生の秋ぐらいだった。
教師だった父が教壇で倒れて呆気なく逝ったのだ。



胆嚢ガンだった。



自分にも他人にも厳しくて怖かったけどしっかりと自分を持った人だった。


元々自覚症状のほとんどない胆嚢ガンに気付いたのは、黄疸の症状が出たもう手遅れな状態。
手の施しようもなく確実に待っている死に、父は臆する事もなく毅然とした態度で最期までを過ごした。





『お前のお祖父ちゃんも、教師だったんだ。』


その中で、父がたった一度だけ弱音を吐いた事がある。



『俺はそれが誇りで教師になるのが夢だった。』


細くなった手が俺に伸びてきて、ゆっくりと頭を撫でた。


『けど、お祖父ちゃんはお前が生まれる前に事故で亡くなってしまった。
お祖父ちゃんはな、それは素晴らしい教師で、卒業した生徒にもいつまでも慕われてたんだよ。』



撫でていた手が止まり父を見ると、遠くを見た父が唇を噛んで悔しそうに顔を歪めていた。



『…俺も、そんな教師になりたかった…』



涙は流れていなかった。
けど、父が泣いているように見えたんだ。



『じゃあ、俺がなるよ!
…お祖父ちゃんと、父さんみたいな教師に!』



幼い頃の人によっては小さな下らない口約束かもしれないけど、その瞬間、嬉しそうに微笑んだ父の顔が今でも胸に刻まれている。







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