…6。
「…ぅ、んんっ…」
小さな唸り声を上げて身じろいだ俺は、誰かに頭を撫でられている気がしてうっすらと目蓋を開けた。
まだぼんやりと視界の中、確かに誰かがそこにいて、でも誰だかは分からなくて。
起き上がって確認したいけど、まだ体が眠りたいって言ってる。
そのうち誰かが離れていく気配がして、あっ、って心の中で呟くと、行って欲しくなくて手を伸ばそうとした。
「…いかな…で…」
―バタン…
ドアの閉まる直前に発せられた声は、多分届いてなくて。
言いようのない寂しさに何だか泣きたくなった。
『えーん、えーん、』
場面は変わり、誰かが泣いている。
プカプカと宙を漂う俺の意識は泣いている誰かを見下ろしていた。
ちっちゃくうずくまり、泣いているのは小学生位の子供で、
『…なんで泣いてるの?』
声を掛けて顔を上げたのは、幼い頃の自分だった。
『…父、さんが…っ』
…ああ、これは確かに自分だ。
俺がまだ小学四年生の時の。
『…泣くなよ、約束したんだろ?』
『約、束…?』
…そう、俺はあの日約束したんだ。
『頑張れよ。絶対になれるから。』
微笑んで頭を撫でると、ぐにゃっと歪んだ顔を必死に引き締めた俺が、唇を噛みながら頷いた。
『俺、なる!父さんみたいな…』
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!