『オレ×オレ』 …5。 …ん! …蓮! 「蓮!」 ハッと目を覚ました。 「煙草。そのままだと火傷するよ?」 「え?あっちっ!」 持っていた煙草を地面に投げ捨てると、灰が落ちた足を払った。 「ばーか。」 「うるさい。」 そう言いながらも戸惑っていた。 これはどういう事だろう。 目の前で笑っている遊佐は、あの頃の遊佐だ。 夢? どっちが? 確か俺は、遊佐と飲んでいた筈だ。 これは夢か…? 夢は深層心理を表すらしい。 それじゃ、俺が昔を望んでいるという事が…。 …馬鹿だな。 確かに俺はあの頃に戻りたいと思ってる。 だけど、 それは自分の気持ちに気付く前に戻りたいという事。 ただ単純に時だけを戻しても駄目なんだ…。 ボーとしていると、遊佐が俺の顔をのぞき込んできた。 「!うわっ!」 「うわ?」 俺の声にちょっと傷付いた顔をすると、遊佐が思いっ切り鼻を摘んできた。 「ふがっ!」 「ボク傷ついちゃったぁ。」 「ふぁるかったよ(悪かったよ)!」 手を払いのけると、鼻をさすりながら応える。 「ちょっと考え事してたの!」 「うわっ!似合わねぇ。」 そう言うと、ニカッと遊佐が笑った。 [*前へ][次へ#] [戻る] |