『オレ×オレ』 …3。 「先に飲んでようぜ」 遊佐の言葉に渋々飲み屋に入ると、先に乾杯をして飲みだした。 …そういえば、4人で飲む時はいつもこんな感じだったな。 ただ、遅れて来たのはいつも俺達の方だったけど。 「…よく、俺が分かったな。」 別人としか思えない変わりように、現に山田は気付かなかった。 「んー。何となく?」 何となくでも、遊佐が俺を見付けてくれた事が、嬉しい。 「…本当に、教師になったんだな。」 マジマジと俺を見ながら、しみじみと言うと、 「冗談かと思ってた。」 「はは。」 冗談だと思われても仕方ない。 あの頃の俺は、今とかけ離れた出で立ちで、到底“教育者”とは言えない生活を送っていた。 「そういうお前は?」 「美容師。」 「美容師?」 「半人前だけどね。」 元々、手先は器用だった。 だけど、わざわざ四大卒業後に目指したのが美容師だった事に驚いた。 そういえば、手が荒れている。 頑張ってるんだな。 と目を細めた。 3年ぶりに会った遊佐は、よく見ると髭が濃くなって、ちょっと老けていたが、間違いなく“遊佐”。 次第に苦しくなっていく胸に、もう 飲むしかなかった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |