『オレ×オレ』
…12。
「痛ってぇ!」
「口切ったぁ。」
水道の前で水をかぶりながら、文句をたれている俺達に、山田と岡崎が言った。
「お前ら、馬鹿だろ。」
「ああ、馬鹿だな。」
結局殴り合いは、俺を探しにきた山田と岡崎にとめられるまで続いた。
「喧嘩の原因は?」
「「ノーコメント。」」
すっかり潰れてしまった煙草を取り出すと端の切れた口に持っていった。
火をつけようとポケットを探って、すっかり忘れていたZippoの存在を思い出すと、
「あ。」
「ん?」
その声に振り返った遊佐が、なぜか俺のZippoで火をつけている。
「俺の!」
「拾っちゃった。」
“拾っちゃった”じゃない。
元々俺は、このZippoを探しに来たのだ。
「…つけろよ。」
遊佐に火をつけさせると、
「そのZippo、やるよ。」
そう言って立ち上がった。
「マジ?ラッキー!」
いつもの遊佐。
だけど、
あのキスをしてしまった俺は、もう、元には戻れないと感じていた。
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