『オレ×オレ』 …11。 「!な、え!?何泣いてんの!?」 「違っ。」 突然泣き出した俺にオロオロすると、遊佐は自分のTシャツの端涙を拭きながら辛そうな顔をした。 「…泣くなよ。困るんだけど…。」 「泣いてない。」 「じゃあ、これは?」 「……」 明らかに強がり。 どう間違っても涙以外に見えそうに無い。 「…泣くほど好きなら、お前にやるよ。 結花ちゃんとは、今、別れたんだ。」 絞り出す様な、遊佐の声。 「え?」 「ふられちゃった。 他に好きな奴が出来たんだって。」 Tシャツの陰から見えた顔は、ちょっと、悲しそうだ。 「お前だよ?」 別れ際のキス。 俺が見たのは、それだった。 「…相手が蓮じゃあ、適わないよな。 しかも、両想いみたいだし?」 ボソッとこぼした後、いきなり俺を引き寄せるとその唇が、俺の口を塞いだ。 「!?」 …濃厚なキス。 煙草の味がする。 「…」 「……」 唇が離れた後、呆然と立ち尽くす俺に遊佐が言った。 「嫌がらせだよ。ばぁか!」 その言葉をかわきりに、遊佐と俺の殴り合いが始まったのだ…。 [*前へ][次へ#] [戻る] |