『オレ×オレ』
…22。
気が付いたら、もう朝の10時を回っていた。
さすがにそろそろ帰らないと…。
名残惜しさを感じながら、貰った袋に荷物を詰め込むと
「んじゃ。」
「…おう。」
簡単な挨拶。
だけど、心の中では
“さよなら”を言っていた。
出来れば、もう会いたくない。
次は、止められる自信が無い。
だけど…。
出来るだけ顔を見ない様に。
嘘みたいに笑いながら、ドアノブに手をかけた。
「蓮。」
「…あ?」
「これ。」
遊佐が手渡したのは、腕時計。
「刺青、隠す道具にしてんじゃねぇよ。」「やっべえ。バレた?」
二人して笑い合うと、
ついでのように、遊佐が言った。
「…服、返さなくてもいいからさ…」
「…ん。」
悲しさに歪みそうな顔を堪える。
たった一つ、
残っていた筈の繋がりが、
切れた瞬間だった。
これで、本当に最後なのか…?
腹をくくると、笑顔で…。
「…じゃあな。」
そう言って、ドアを開けた。
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