『花束を君に』 2*1 そろそろ、15分前だ。 そわそわと時計を確認し、入口を見ると丁度入ってくる所だった。 …本当に時間ぴったり。 深田さんは真っ直ぐこちらに向かってくると、返却の本をカウンターに置いた。 「ご返却ですね?」 「……」 深田さんは相変わらず無言のまま。 返却手続きが済むと今日借りる本を探しに行ってしまった。 うーん。何とか声を聞いてみたい…。 何かないかとポケットを探ると飴玉を見つけた。 使えるかも…? 借りる本を見付けて、深田さんがやってきた。 本の上に会員証。 それもいつもと同じ。 「貸出しですね?」 ここまではいつも通り。 だけど、ここからは予定外の筈。 貸出し手続きをすると、本と一緒に飴玉を差し出した。 「…?」 「昨日の絆創膏の御礼です。」 貰うにしても、断るにしても何かしら言う筈だ。 「……」 しかし、深田さんは無言のまま本だけを受け取って出て行ってしまった。 え、えぇ〜! …それは無いよぉ。 作戦は失敗に終わった。 [次へ#] [戻る] |