『花束を君に』
last*2
それでも、私は香苗さんの代わりでしかない。
香苗さんの話をする時の様に、慈しむ顔や愛しい笑顔を向けてもらう事はなかった。
…そういえば一度だけ。
カスミ草が好きだと言った時、とても優しい目を向けられた時があった。
「…いつもすまない。」
ここ最近の深田さんの口癖だ。
それでも、彼から『来なくていい』と言われる事はなかった。
「何かお礼がしたいんだが…」
何がいい?
と聞かれたが、特に思い付かない。
強いて言えば…
「じゃあ、早く元気になって下さい!
…今日もご飯を残しましたよ?」
作るのが多過ぎるんだよ。
と笑った深田さんは、まだどこか、ぎこちない。
「…そういえば、前に花屋で俺を見掛けたって言ってたよね?」
それは、私が深田さんをつけた時…。
私が、最初に病院へ行った時の話だった。
「…はい。」
恥ずかしい。
後をつけるなんて幼稚な事をしたと反省している。
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