『花束を君に』
8*4
線香をあげさせてもらうと、深田さんがお茶を用意してくれた。
「あいにく、茶菓子を切らしていてね…。」
「いえ…お構いなく。」
そういえば、勢いで上り込んでしまった。
初めて入った深田さんの家は、想像と違って雑然としていた。
散らかった部屋は、“汚した”というよりは“暴れた”という感じ。
相当堪えているんだろう。
憔悴しきった表情と目の下に出来た隈で分かる。
「…体の毒ですよ?」
心配する事しか出来ない自分がもどかしかった。
このままにしては置けない。
何よりも死んだ香苗さんが悲しむ。
「顔色…悪いですよ?」
「……」
「あ!私何か作りましょうか。」
立ち上がるとキッチンに向かった。
深田さんは停める様子もない。
冷蔵庫を開けると中には何も入ってなかった。
ろくな物を食べていなかったのだろう。
台所は、使った形跡すらなかった。
もしかしたら、寝てすらいないのかもしれない。
「深田さん…。
ちゃんと食べてますか?」
「……」
答えない。
とりあえず、このままじゃ何も作れそうにない。
深田さんに断って、材料を買いに出掛けた。
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