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『花束を君に』
8*3

「嘘…。」
「君が来てくれた夜に、容態が急変してね。
一度も目を覚まさないまま、二日後に…」
後ろから現れた深田さんが、壁に寄り掛かる様にして話出した。

「…私の牲?」
私が怒ったりしたから?

「違うよ。元々、今日明日の命だと言われていたんだ。
香苗も知ってた。
むしろ君が来てくれて喜んでたよ。嬉しい時間を過ごせたってね。」
無理に笑顔を作った深田さんの顔が、余計に痛々しかった。

こんな時にまで私に優しくなんてしないで?

激しく首を振る私に、深田さんが何かを差し出した。

…手紙?
それは、白い封筒に入った手紙だった。

「香苗から預かってたんだ。…渡しに行かなくてすまない。」

そう言うと、写真の前に座って、線香に火をつけた。

…深田さん。
尽きる事のない線香から、深田さんがほとんどそこに座っていた事が分かった。

向けられた背中が泣いている。




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