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『花束を君に』
8*2

ピンポーン
自動ドアの前で部屋番を押し、呼び出しをすると
『…はい』
意外にもすぐに応答があった。
…深田さんだ。
声に覇気がない。
「本堂図書館の城田です。本の回収に参りました。」

『……』
そのまま切られたが、自動ドアが開いたところを見ると、入ってもいいという事なのだろう。
エレベーターのボタンを押した。


ここは五階。
部屋の前に立つと表札に
『FUKADA』
と書いてある。

一度大きく深呼吸すると、震える指で呼鈴を鳴らした。

ガチャ

深田さんだ。
ジーンズにシャツ。
無精髭でさらにやつれた姿に驚いた。

…深田さん?

「上がって。」

そんな訳にはいかない。
香苗さんに悪い。
「いえ、結構です。本を戴いたらすぐに帰りますから。」すると、深田さんは少し寂しそうな顔をして言った。

「…線香をあげてくれないか?」
その言葉に弾かれた様に上り込むと、入ってすぐの部屋に香苗さんを見付けた…。

黒縁の写真たての中で、優しい笑顔を浮かべている顔は、まだ病気になる前の元気な姿だった。



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あきゅろす。
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