『花束を君に』
8*1
その日の夜。深田さんは図書館にこなかった。
私のライバル宣言を香苗さんから聞いてしまったのだろうか。
内心ドキドキだ。
とんでもない事を言った自覚はある。
また嫌われたかも…。
落ち込んでしまった。
“もう少しで落ちる”なんて、絶対嘘だ。
全然脈なんてないではないか。
深田さんの中は香苗さんでいっぱいなのだ。
私の入る隙なんて1ミリもない。
結局、十日が過ぎて、二週間が過ぎても深田さんは現れなかった。
「…霞ちゃん。」
「はい。」
館長に呼ばれて家を訪ねる事になった。
返却連絡の電話は済ませた。
それでも返却されない本は直接回収に向かう。
普段は館長の仕事。しかし、今回は私が行く事になった。
住所を頼りに着いたところは、茶色い壁の7階建てマンション。
病院と花屋を結ぶ、通りの延長にある建物だった。
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