『花束を君に』 7*1 翌日。 私は頼まれた通り、病室の前に立っていた。 この間の病室だった…。 コンコン。 「はい。」 ノックに答えたのは、もちろん女の人だ。 「…失礼します。」 遠慮がちにドアを開けると、ベッドの上に横になったままこっちを見ている。 やせ細った体。 副作用からか、抜け落ちた髪を隠す様に帽子を被っていた。 この人が、深田さんの奥さん…。 「よく来てくれたわね? さぁ、こっちに座って?」 促されて奥に進むと、部屋中が花で埋め尽くされていた。 右を向いても左を向いても、カスミ草。 白く、やつれてはいるが、元々綺麗な人なのだろう。 白い花畑にいる、天使の様だった。 辺りを見回す様子に気付くと 「主人が買ってくるのよ。私が好きな花だからって。」 と笑っていた。 よく笑う人だな。 それが初対面の印象だった。 [次へ#] [戻る] |