『花束を君に』 7*6 「カスミちゃん、ラッキーよ? 名前が良かったのかもね。私、気に入っちゃったもの。」 ? 「智央の事、よろしく頼むわね?」 「!! こ、困ります!」 そんなこと言われても困る!そんな遺言みたいな…。 「…もう少しで落ちるわよ?」 「な!」 そんな事聞いてない! 首を振ると私に香苗さんが言った。 「私のお古で悪いけどね。」 「…辞めて下さい。そんな笑顔で死ぬなんて言わないで下さい!」 「カスミちゃん…。」 「深田さんを幸せに出来るのは香苗さんだけです!」 二人の間に入る隙間がない事ぐらい分かってる。 痛い程身に染みた。 不意に握られた手に力が入った。 「…それが出来ないから頼んでるんでしょ? ガタガタ吐かすんじゃないよ。素直にハイって言ってりゃいいんだよ。」 ドスを利かされても納得する気はない。 「お断りします! 欲しかったら、香苗さんが治ってから自力で奪い取りますから!」 そう言い放つと病室を飛び出した。 「…受けてたつわよ?」 走り去る背中にぶつけられた声は、私の耳には届かなかった。 8章へ [*前へ] [戻る] |