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『花束を君に』
6*3

「何かお薦めの本を一冊見繕って下さい。」

会員証と共に出された意外な要望に驚いたが、ここは司書の見せ所。
随分こない間に新刊がたくさん入荷していた。
その中からお気に入りの一冊を取り出すと、そのまま中身も見ずに
「じゃあ、それを」
と言われた。

正直、深田さんの真意が分からない。

なぜこんなに、何も無かった様に話し掛けるのか。
どうしていつも自分で選んでいた本を私に頼むのか…。

貸出手続きが済んだ本をカウンターに置くと、深田さんは会員証だけを取って外に出て行ってしまった。

「え?…ちょっと、待って!」

私は本とこの間借りた傘を持って後を追った。




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