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『花束を君に』
6*1

翌日から、いつもの時間になっても深田さんはこなかった。

十日が過ぎた頃、館長に言われて電話をする事になった。「霞ちゃん。
深田さんに催促の電話、お願いできる?」

遅滞を報せるのも仕事の一つだ。返却されなければ、他の人達が読めない。
だけど…。
深田さんに電話をするのは気が重かった。

「……」
「…これも仕事だから。」
分かってる。
受話器を取ると意を決して登録された番号を押した。


何度目かの呼出音で、繋がったのは留守録だった。

『深田です。只今留守にしています。
ご用の方は、発信音のあとにお名前とご用件、電話番号をお話下さい。』

「…本堂図書館の城田です。
お借りになっている本の返却期限が過ぎましたのでご連絡しました。
ご都合の宜しい時にご来館下さい。」

受話器を置くと何かが頬を伝って落ちた。
…涙?
隠れる様にしゃがみ込むと次々に溢れて出る涙を拭った。


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