『花束を君に』 5*1 昨日の天気が嘘の様に、その日は朝から雨だった。 15分前。 深田さんがいつもの様に入ってきた。 少しスーツの肩を濡らして… 「ご返却ですね?」 「……」 本を受け取ると同時にハンドタオルを差し出した。 「…雨の日は皆さんにお配りしています。 使用後はそちらのボックスに入れて下さい。」 笑え…。 心の中で何度も言い聞かせながら平静を装った。 深田さんは素直にタオルを受け取ると、カウンター横のオススメコーナーを見ながら肩を拭いていた。 …少しだけ触れた指先が熱い。 「…ご病気だったんですか?」 「え?」 不意に声をかけられて驚いた。 「お休みされていたでしょう。」 「…ええ。まぁ。」 曖昧に答えてはぐらかそうとした。 こんなに長く話しかけられたのは初めてかも…。 少しでも気に留めてくれていたのが、嬉しかった。 「病院で見掛けました。」 !! [次へ#] [戻る] |