『花束を君に』
1*1
いつも閉館間際にやってきて、毎日一冊ずつ借りて行く。
スーツ姿で、神経質そうなその人が気になり出したのは些細な事がきっかけだった。
「っ!いったぁ。」
紙で切ってしまった指を咥えて眉をしかめた。
この図書館に勤めて2年になる。
大好きな本に携わる仕事がしたくて、司書の資格を取ったまでは良かったが、働き口がなかなか見付からない。
大学ももう卒業となり、どうしようかと途方にくれていた時に、たまたま入った図書館が、ここ。
『私立本堂図書館』だった。
「すみません。館長さんはいらっしゃいますか?」
和服の、いかにもタダ者ではなさそうな老人がカウンターに座っていた。
読んでいた本から顔を上げると老眼鏡を持ち上げてこっちを見た。
「俺だが?」
…マジで?
予想外というか、予想内というか…。
だよね。この人が館長じゃなかったら、ここには座って無いよね…。
この出で立ちだもん。
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