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『花束を君に』
3*2

そんなある日だった。
その日は新刊が出たばかりで、その中の一冊を深田さんの為に取って置いた。
新刊は人気が高く、あっという間に貸切ってしまう。
職権濫用?
このくらい許して頂戴!

「今日の新刊です。」
深田さんは本を受け取ると表紙を見たまま黙っていた。

あれ?いつもと違う…。

「そ、そういえば、この間オススメした本は如何でしたか?」
私が聞いたのと同時だった。
「城田さん。」
名前を呼ばれたのは初めてだった。
覚えてくれた事は嬉しかったが、何だかちょっと嫌な予感がした。

「…はい。」
「この様な好意は迷惑です。」

キッパリと何の躊躇もなく放たれたその言葉は、刃物より鋭く、私の胸を突き刺した。
「……」
「私は、貴女の好意に応える事は出来ません。」

涙が出そうだった。

「……すみませんでした。」
その言葉だけで精一杯で、涙を堪えて真っ赤になった顔で、無理矢理笑って見せた。

「もう、しません。
…だから!またいらして下さい…。」

深田さんは少し苦い顔をしたが、素直に新刊を借りると帰って行った。



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