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『君と繋いだ手』
*20



さて、
マフラーを何故静が持っていたのか
という事なのだが…

思いもよらずいきなり壁にぶち当たった。



というか、最後に巻いてたのっていつだっけ。


「……」


…思い出せない。


必死に頭を巡らせてはみたものの一向に思い出す気配がないのは、記憶力が乏しいからじゃない。

…頭の芯が痺れてる所為だ。


考える事をやめ、ぼんやりと天井を眺めた。

白地に黒の変形水玉のような模様が、中途半端な自分みたいで苛々する。


それは、子供の起こす癇癪のようなもので、
結局、訳の分からない苛立ちを天井に転化しただけなのだが。


これ以上見ないようにと丸まりながら横を向くと、


もふっ。
「……」


顔が埋まった柔らかい感触は、すっかり頭から追いやっていたマフラーだった。


…温かい。


マフラー越しに吸い込んだ空気は、洗剤に混じっていい香りがする。


どこか懐かしいその香りで微笑むと、その瞬間、さっきまでの苛々が嘘みたいにスーッと消えた。


…不思議だな。
安心する。



だんだんと重くなるまぶたは、元々眠かったのかもしれない。


…それもいいかな…



抵抗する事無く沈んでいく意識の中で、俺は静の夢を見た。


それは、静に初めて会った日のもので…

そっか。
あの時床に落としたのを
…静が、拾ってくれたんだ。


思い出せなかった記憶が戻ってくる。



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あきゅろす。
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