『君と繋いだ手』
*9
「なっ!」
“えっち”の言葉に反応してこっちを見ると、
「あなたに言われたくありません!」
どうやら怒らせてしまったらしい。
見た目地味だし、てっきり赤面して下を向くとか泣き出すとか、そんなのを想像していたのに…予想外の反応だ。
「大体ここをどこだと思ってるんですか?図書室ですよ、図書室!さっきだって…!」
そこまで言って思い出したのか、一度黙り込むと睨み付けながら言われた。
「学校の一室で…破廉恥過ぎます!」
…ん?今何て言った?
“破廉恥”?
すっげえ。破廉恥とか久々に聞いた。
ていうか、そんな言葉を遣うやつがまだいる事に驚いた。
検討違いのところで驚き、マジマジと橋本さんを見ているとその視線に気付いた彼女が、
「…何見てるんですか!?」
嫌そうに眉をひそめた。
「……」
なんていうんだっけ、こういうの。
「一年生。名前は?」
ずっと黙っていた俺に名前を聞かれて、たぶん怒られるとか思ったんだろう。
一瞬迷った表情を見せた彼女は、それでも睨み付ける事を止めずにハッキリとした口調で言った。
「橋本静(はしもとしずか)ですが?」
何?何か文句でもあるの?
という心の声が聞こえてきそうだ。
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