『君と繋いだ手』
*5
昼休み。
ここは校舎の片隅にある図書室で、結構広くて穴場だったりする。
「寒いよ。」
人気のない本が並ぶ棚の前で制服ボタンに手をかけながら言った。
「そうだね。…だから温めて?」
体温は温かくて、柔らかい感触とかいい匂いとか、たまらなく好きだ。
ゆっくりと首筋に顔を寄せると、それをするりとかわした先輩にその気はなさそうだ。
「マフラー、捲いてるでしょ?」
「じゃあ、取る。」
首に捲いていたマフラーを床に落として引き寄せたが、そんな事を言っているわけじゃないとちゃんと分かってる。
今度は怒ったような声で言われた。
「…私を卒業させない気?」
まぁ、こんなところを見られたら、停学…かな?
ましてやもうすぐ卒業なのだ。
極力穏便に過ごしたいと思うのは当たり前の事だろう。
…だけど俺には関係ないし。
そのまま強引に進めても良かったが、後々面倒な事になりそうなので諦める事にした。
「はぁ…。」
ふてくされて溜め息を漏らし座り込む俺を、心配そうに覗き込んだ先輩はちょっときつめのお姉様系。
…といっても中学生レベルでの話だが。
綺麗に浮き出た鎖骨がなんとも魅力的で、結構続いている彼女の中の一人だ。
「…怒っちゃった?」
きつそうな顔のわりに優しくて、俺のわがままに付き合ってくれるところが好きだったりする。
「別に?」
クスクス笑いでそう言うと、そのまま唇をゆっくりと塞いだ。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!