『君と繋いだ手』 *11 嫌な予感がしながらも素直に 「……いないけど。」 「本当ですか!?」 突然いつもの明るさが戻り、飛び付くように俺の手を掴んだ小林は、 「じゃあ、千尋先輩とは付き合っていないんですね!」 ……は?千尋? どうしていきなり千尋の名前が出てくるのか。 「先輩達って仲がいいんで付き合ってるのかなって…。」 …どうなったらそんな発想が出てくるのか。 物凄い勘違いにたまらず吹き出すと、 「俺と千尋は天敵だ。お前が心配するような仲じゃないから!」 はっきりと言い放った。 そもそも千尋は一年の時のクラスメート。 今は隣のクラスになってしまったが、たまたま同時期に俺は部員、千尋はマネージャーとして入部したというだけの関係。 同じクラスに他の部員がいなかった為よく話をしたりはしたが、 俺はよく『チビ』と馬鹿にされていたし、そんな千尋に甘い感情なんて抱くはずがない。 「…それじゃ、協力してくれませんか?」 「ん?何の?」 話聞いてたんですか?とばかりに俺を見つめる小林に首を傾げると 「いや…だから、千尋先輩が好きなんですよ。」 [*前へ][次へ#] [戻る] |