『君と繋いだ手』
*8
「ったく!…一々ムカつくんだよ。」
独り言を繰り返して家に着いたのは、辺りもだいぶ暗くなってからだった。
結局部活はサボった事になり、顧問には部長の自覚がないとか何とか怒られて、罰として外周を五周も走らされてしまった。
…それもこれも全部、千尋のせいだ!
寝過ぎたのもサボろうとしたのも全部自分のせいだけど…。
それでもあの時ケンカなんかしていなかったら、遅刻で済んでいた筈だ。
…たぶん。
とにかく、この苛つきを全部千尋のせいにして勢いよく玄関のドアを開けた。
「ただいま!」
「…おかえり。」
綺麗に揃えられた見覚えのある靴に、聞き覚えが有りすぎる声が出迎えてくれた。
「…拓己…」
リビングで我がモノ顔でくつろいでいるのは、親友の一人の高橋拓己と妹の佑夏(ゆうか)だ。
テレビの前という特等席のソファーに悠然と腰を下ろし、佑夏の手作りクッキーを片手にチャンネルを替えている。
「おかえりじゃない!帰れ!」
その不躾な態度にムカムカしながら怒鳴り散らした。
「……」
拓己の家は二軒隣りで、違うクラスになってからもこうやって俺の家に入り浸っている。
なんかもう俺よりもこの家に馴染んでいる感じで、親も自分の息子の様に扱っていた。
…いや、もう息子と思っているのかも知れないが。
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