『君と繋いだ手』 *4 「ねぇ。どうして名前知ってたの?」 「…たまたま。」 人を何となく眺めているのが好きな俺は、実は全学年ほとんど生徒の名前を覚えていたりする。 だけど一々説明するのも面倒だし、 だから何だという事もないので答える必要はないだろう。 「そうなんだ。」 ただ素直に納得してしまう佑夏は、 「すごい偶然だね」 って笑っていた。 眠っていた所為で時間感覚がなかった俺は、今が授業中、しかも六時間目だと知って驚いていた。 ベランダに出たのはお昼休みだから…、 どうやら丸一時間以上そこにいたらしい。 佑夏は美術の時間で、今日は外で写生だったようだ。 「じゃ、戻るね。」 「…待った。」 手を振る佑夏を呼び止めた俺は、一体何を言うつもりなんだろう。 「……」 「?」 「…何かあったら、俺に言えよ…?」 自分でも予想外過ぎる自然に出た言葉に、キョトンとした顔の佑夏が、 「…うん、ありがとう。」 少し照れた顔で微笑むのが、いつまでも頭から離れなかった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |