『君と繋いだ手』
*10
「勇気先輩!」
数日が過ぎ、
部活帰りに数人で歩いていると後輩の一人に声をかけられた。
「ん?どうした?」
いつも明るいその後輩は小林と言って、バスケ部の一年だ。
正直、バスケは下手だったが、朝や部活後に自主練をしている真面目な奴。
…結構気に入っていたりする。
「えっと…」
言葉を濁しながら逸らされた視線を見て、たぶん内緒で相談でもあるのだろう。
…まさか、部活を辞めたいとか?
それはちょっと嫌かも…
そんな事を考えながらその場にいた仲間達と別れると、ちょっと遠回りをして帰ることにした。
「……」
「……」
夕暮れの坂道で自転車を引きながら、なかなか口を開かない小林を目だけを向けて、つい零れそうになった溜め息を噛み殺した。
いつもの人懐っこさはどうしたのか…。
こんなに押し黙られてしまうと正直困る。
手持ち無沙汰で何となくポケットに手を突っ込むと、カシャっと音をたてた飴玉が指に触れた。
「…飴、食べる?」
「あ、はい…」
包みを受け取ろうと伸ばされた手が触れた瞬間、
「…勇気先輩って好きな人いますか?」
すぐに朱音が頭をよぎったが、それはもう終わった事。
それよりもこの展開って…。
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