『揚羽蝶』
七/一
柔らかな陽射しで目を覚ました。
すぐ隣りで揚羽が覗き込んでいる。
「揚…!先、生…」
その後ろにいる先生を見て顔を強張らせた。
「!」
咄嗟に揚羽の手を引いて、隠す様に自分の後ろに引き寄せると、先生はちょっと困った顔をして僕を見た。
「大丈夫ですよ。別に揚羽さんを取って食おうなんて思っていません。」
「え?」
どうして、名前を知っているのだろう。
「発作を起こした貴方を、揚羽さんが助けようと頑張ってくれたんですよ?」
揚羽が?
揚羽を見ると、心配そうな顔で僕を見ていた。
「揚羽…」
こんなに愛しいのに、
彼女は僕と一緒に居れないと言う。
きつく唇を噛むと目を背けた。
「…」
「…」
しばしの沈黙の後、先生が言った。
「揚羽さん。席を外して下さい。」
その言葉に素直に頷くと、揚羽は部屋を出て言った。
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