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『揚羽蝶』
一/五

…今のは?

始めは鬼女だと思った。
だけど本当は…?

月に焦がれ過ぎて見せた、幻覚では無かったのか?


姿が消えた後も目を逸らす事が出来ず、追い掛けたくて堪らなかった。


…そっと、覗いてみようか。
ちょっと覗いて帰って来るだけ。
見つからないように、幻覚では無いと確かめるだけなら大丈夫じゃないか?


高鳴る胸を押さえ、立ち上がろうとしたその時…。

「うっ…」
胸の苦しさに蹲った。


発作だ。


わずかな月明りの中、必死に薬をまさぐった。

幼い頃からで慣れてしまった発作も、暗闇の中では勝手が違う。

何とか薬を見つけ出し、震える手で飲み下したが、

意識はそのまま、暗い闇の中へと墜ちて行った…。

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