『揚羽蝶』
三\二
「…」
「あ!」
「!」
突然大きな声を出すと、何かに気付いて私を見た。
「…言ってる事、分かりますか…?」
…今更?
ゆっくりと頷くと、満足げな顔で部屋から出て言った。
「終わったら教えて下さい。」
そう言い残して。
…どういう事だろう。
ここがどこなのかもそうだが、
自分が、どうして優しくされているのか分からない。
今まで、優しく笑いかけられた事など無かった。
決まって、不愉快な笑顔のあとは辛い事が待っていた。
…だけど、これは?
ぐるりと部屋を見渡すと山積みされた紙に、色とりどりの絵の具。
今まで見ていた世界とは全然違う。
なんて、艶やかで美しいんだろう。
涙が頬をつたった。
灰色の私には、この部屋が眩し過ぎて、零れ落ちる涙を止める事が出来なかった…。
四へ
[*前へ]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!