『揚羽蝶』 三\一 目が覚めると、見知らぬ天井が見えた。 すぐ脇で、何かを擦る様な音がする。 「!!」 反射的に飛び起きると、そのまま後退りした。 誰だろう…。 やはり知らない男が、体を丸める様にして、必死に何かを書いていた。 …? 気付いていない? …何をしているんだろう。 ちょっと興味を持ち近付こうとすると、 「…わぁっ!」 男が布団を見て驚いた。 それからキョロキョロと回りを見て、私を見つけると、 笑った。 「はは。…起きてたんですね?…すみません。」 本当に気付いていなかったらしい。 「大丈夫ですか?…一応、見えるところは手当てしたんですが…」 体を見ると、本当だ。包帯が巻かれていた。 「とりあえず、着替えて下さい。僕の服ですみませんけど…。」 そう言って、男は私の前に服を置くと、水の張ったタライに手拭いも用意してくれた。 [次へ#] [戻る] |