『揚羽蝶』
終/五
それが誰だったのか思い出せないまま、相手の親御さんと会う日が来た。
贔屓にしている和食屋の座敷に座っていると、“彼女”は現れた。
「!」
すっかり髪は色褪せて、白髪だかなんだか分からない頭になっていたが、間違えない。
揚羽だった。
「…揚羽?」
驚いた俺に、揚羽は小さく微笑むと、変わる事のない瞳から、一筋の涙を流した。
「康介さん…。」
知り合い?とか何とか言っていた気がしたが、そんなことはどうでもいい。
「会いたかった。」
俺の言葉に、揚羽が
「私も」
と言った。
あの日の記憶が急速に甦る。
君と一緒に過ごした日々。
君を愛し続けた日々。
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