『揚羽蝶』
終/一
あれから、何年が経っただろうか…。
僕は二十歳で死ななかった。
いつか揚羽を迎える為に、積極的に外に出る様になった僕は、
いつの間にか発作が起きなくなり、僕は普通の人間と変わらない生活を送れるようになっていった。
あそこでの生活は一体なんだったのか。
今、思い出すと笑ってしまいそうだ。
僕は、父の会社を継ぎ、時代の流れに乗り、数々の成功をおさめた。
結婚は一度した。
でも、続かなかった…。
いつも君の影ばかり見ていた僕に愛想を尽かして、妻は出ていってしまった。
先生と共に行ってしまった君を、何度も捜したんだ…。
だけど、君は見付からなかった。
代わりに、先生がアメリカで亡くなった事を知らされた。
『揚羽』
という名前だけじゃ、僕に見つける事は出来なかった。
あれほど好きだった絵も、結局やめてしまったよ。
白い紙はあの時の幻想を見せるから…。
『揚羽』
愛しているよ?
『揚羽』
どこにいるの?
君にもう一度会う約束はいつ果たせるのか…。
女々しいと言われるかも知れないが、君に再び会えるまで髪を伸ばすことにした。
笑っちゃうだろ?
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