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『揚羽蝶』
六\四

「…さて。」

容態が落ち着くと、私に向き直って男の人が言った。


「私は、彼の家庭教師、兼、担当医の坂本です。」

「…揚羽です…。」

この人が“先生”。

声しか聞いた事の無かった先生が、私に話掛けている。


「康介君の調子が良かったのは君のおかげかな?」

そう言って私に笑い掛けた後、真面目な顔で言われた。


「彼の事を好きなのかい?」
いきなりの核心に驚いた。

「はい。
…だけど、離れるつもりです。」


先生は、一言。
「そうか。」
と言っただけだった。

七へ

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