『揚羽蝶』
六\二
好き…。
この人を好きになっていた。
そんな時、家政婦の話を聞いた。
「…最近、ちょっとおかしくない?」
「ああ。坊ちゃんの事?」
…?
「食事の量が増えてるし、部屋に一層閉じこもる様になったでしょう。」
「…そうよね。」
「何か、良からぬ事をしているんじゃないかしら。」
……。
そろそろ、ここには居られない。
そう思った。
彼の大好きな“先生”。
押し入れの中で、彼らの話を聞くのは楽しい。
そして、
「揚羽。ごめんね?狭かっただろう。」
柔らかい笑顔で、扉を開く彼が好き。
庭に出て風に当たっていると、彼が突然言った。
「…ずっとここにいてくれないか?」
え?
気のせいかと思った。
「僕と結婚してくれないか?」
私をジッと見つめて、彼が言う。
…本当?
「…愛してるんだ。」
嬉しい!
胸が躍った。
声さえ出たら、すぐに私も愛していると叫んでいただろう。
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