『揚羽蝶』
五/二
そして、花が好きな事。
いつもの様に窓辺に座らせ絵を描いていると、山積みされた絵が風で散らばった。
「あ…」
急いでかき集めていると、彼女が一枚の絵を見たまま、止まっている。
「…何見てるの?」
覗き混むと僕が描いた絵。
花の絵だった。
「…紫陽花?」
「…」
「好き?」
「…(こくん)」
紫陽花の絵を床に置くと、もう一枚絵を横に並べた。
「これは露草。」
「…(にこ)」
…牡丹。椿。芍薬。雛菊。菖蒲。天竺牡丹。福寿草。千寿菊…。
次々に絵を並べては指を差して名前を聞いた。
「花が好きなんて、蝶々みたいだ。」
「?」
「蝶々。…これだよ?」
図鑑を取り出して蝶々を開く。
「紋白蝶に揚羽蝶…。」
「…!」
彼女が一匹の蝶を指差して僕を見た。
「…揚羽蝶?」
「…(こくん)」
揚羽蝶がどうしたのだろう。
伝わっていない事に気付き、もう一度花の絵を指差した。
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