『揚羽蝶』
一/二
その頃の僕はというと、産まれながら心臓が弱く、二十歳までは生きられないだろうと言われていた。
両親には甘やかされ、学校にも行っておらず、
唯一、絵を描く事と本を読む事だけが楽しみで…。
週に二度来る家庭教師だけが、下界との接点。
自分はいつか、この座敷牢の様な部屋で、ただ、心と体を腐らせて行くのだろう…。
そう、思っていた。
そんな僕があの人に出会ったのは、神無月。
僕が17歳の時だった。
その夜は、風が強かったのを覚えている。
「ハァ。」
何度目かの寝返りの後、溜め息を吐いた。
…眠れそうにない。
今日も何もすることがなく、日中に寝過ぎてしまった。
パッチリと覚めた目は、一向に閉じる気配が無い。
しょうがないと寝るのを諦めた。
…どうせ、昼に寝ようが夜に寝ようが、大した変わりはないんだ。
起き上がり、少し窓を開けると、澄んだ風が吹き込んで来た。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!