『揚羽蝶』
五/五
先生が帰った後、押し入れの中でジッと隠れていた揚羽と庭へ出た。
「ごめんね?狭かっただろう。」
「…(ふるふる)」
それでも、庭に出て袖をなびかせながら、優雅にまわる姿の方が、ずっと自由で美しい。
本当は、このままここから出してあげた方が幸せなんだろう。
だけど、
「…ずっとここにいてくれないか?」
揚羽の動きが止まった。
「僕と結婚してくれないか?」
突然の告白に戸惑いながら、揚羽はジッと僕を見ている。
「…愛してるんだ。」
揚羽は、一瞬嬉しそうな顔をしたが、
首を横に振った。
「!どうして!?僕の事嫌い?」
「…(ふるふる)」
詰め寄った僕に、揚羽は悲しい顔で首を振った。
「それじゃ…。
一緒にいてよ…。」
「…(ふるふる)」
「あげっ!!」
発作が起きた。
興奮し過ぎた。
苦しくなる胸を押さえて倒れる様に蹲った。
「…!」
…揚羽。
伸ばした手は空を掴んだだけで、揚羽には届かなかった…。
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