『揚羽蝶』
四/五
サラサラで胸まである髪は、少し乱れてはいたが、それでも美しかった。
瞳の色は予想に反して真っ黒で、整った顔立ちだったが、
“日本人の顔で髪だけが金色”
といった風貌だ。
「…変な事聞くけど、
髪って、染めているの?」
失礼かと思ったが聞いてみた。
「…(ふるふる)」
小さく首を振っている。
「…綺麗だね。」
そう言うと、髪を一房掌に乗せてみた。
…綺麗だ。
だけど、この姿が人とは違う事ぐらい僕にだって分かる。
何やら事情がありそうだし、怪我もしていて、声も出ない。
「君さえ良かったら、暫くここにいてくれないか?」
気が付いたら頼んでいた。
「君の絵が描きたいんだ。」
彼女は、僕を見ている。
「…怪我が治るまででいいから。」
触っていた髪を離すと頭を下げた。
「お願いします。」
あの時君は、どんな顔をしているのだろう。
あの時君は、何を考えていたのだろう。
僕の手を握ると、花の様に笑った。
五へ
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